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「注文をまちがえるリストランテ」に行ってきました!

秋分の日、大丸京都店ファミリー食堂にて

「注文をまちがえるリストランテ」が大丸さんにやって来た!

 2019年9月23日月曜日・秋分の日。この日、大丸京都店8階ファミリー食堂の前には長蛇の列ができていました。いつもと違うフロアの様子に、何があるの?と不思議そうな表情で覗き込むお客さまの姿もたくさん見られます。

 食堂の入り口には2つの看板が並んでいます。
『まぁいいかCafe Open』
『注文をまちがえるリストランテ Open』

 「注文をまちがえるリストランテ」?! 初めて聞く方は、えっと驚いてしまうかもしれません。
 実はこのレストラン、認知症を抱える方が店員さんになって接客をするというお店なのです。
 だから、ときには注文をまちがえることがあるかもしれない。でもそんなまちがいを受け入れて、「まぁいいか」とまちがえることを一緒に楽しんでしまう、そんな不思議な、あたたかい雰囲気が漂うお店なのです。
「まぁいいかlaboきょうと」代表の平井万紀子さん(向かって右)とキャストさん
「まぁいいかlaboきょうと」代表の平井万紀子さん(向かって右)とキャストさん

「注文をまちがえるリストランテ」って、どんなレストラン?

 この取り組みは、遡ること2年前、2017年秋に東京でマスコミや介護業界の関係者が「注文をまちがえる料理店」をスタートさせたのが始まりで、以来全国各地で開催されるようになっています。京都では、昨年「ぜひ京都でもやりたい」と、「まぁいいかlaboきょうと」が名乗りを上げ、第1回目のリストランテをオープン。その後も企画主旨に賛同するお店やホテルの協力を得ながら、下京区ではホテルグランヴィア京都やマールカフェが場所を提供し、このリストランテは次々とお披露目の機会を増やしてきました。
 「まぁいいかlaboきょうと」代表の平井万紀子さんは言います。
 「まちがえることが目的ではなく、まちがえても大丈夫、まぁいいかと受け入れてもらえる、そんな寛容な社会になれば」。
 そもそもは、平井さんが同居を始めたお母さんの晏子(やすこ)さんとどう向き合っていったらいいのか、悩み苦しんだなかでみつけた取り組みでした。認知症の診断を受けたお母さんの症状は年々悪化し、言ったこと・やったことを即忘れる、時に激しい感情を爆発させる。病院への入退院を繰り返しながら、デイサービスに行きたがらず、「働きたい」と言い続ける母。そんな姿を見ながら、京都で実施されたイベント「注文をまちがえる料理店の作り方」に参加、「これだ!」と思い、その場ですぐ「私やります」と手を挙げていました。
どの作業も二人三脚で
どの作業も二人三脚で
お料理を運んで行った先でも笑顔があふれます
お料理を運んで行った先でも笑顔があふれます
両手をスタッフに支えられて。一歩一歩ゆっくりしっかり
両手をスタッフに支えられて。一歩一歩ゆっくりしっかり
いい笑顔! 見ているほうもつられて笑顔に(^^♪
いい笑顔! 見ているほうもつられて笑顔に(^^♪

笑顔があふれるあったかい料理店

 京都のどまんなか四条烏丸、老舗百貨店「大丸さん」といえば京都に長く暮らす方にとって特別な場所。代表の平井さんにとっても、幼少期に大丸さんで過ごした時間は、家族みんなの一大イベントだったといいます。
「世界アルツハイマー月間という特別な回に、こんなにふさわしい場所はない!」
平井さんの強い想いに、たくさん方のご尽力もあって、ここ大丸ファミリー食堂での開催が実現したそうです。
 「常日頃から、京都を学び、伝え、京都のまちと共に発展することを掲げる“古都ごとく京都プロジェクト(KKP)”を推進しているので、打診があったとき、その一環としてもいい取り組みだと思いました」と語ってくれたのは、大丸京都店営業3部長の今井良祐さん。食堂の外に立ってずっとリストランテを見守っておられましたが、「応援してくれるひとがこんなに大勢来てくれるなんて」、と顔をほころばせます。「とても他人ごとではない年齢に差し掛かっているので、親戚の叔父叔母の顔が脳裏にちらつきました」とも。このあたりはわれわれ「まいぷれ」も本当に大きくうなずきたいところでした。
 お客さまは老若男女、さまざまな世代の方々が見えていましたが、「知り合いが働いているから」「お友だちに誘われて」と、親しいひとから聞いて来た、という方がほとんどでした。
 開店と同時に駆け込むように入ってこられた、60~70代の女性7人グループさんは、「お友だちから聞いて、待ちかねて来たんです。同年代のひとたちの取り組みなので、とても関心がある。他人事ではないですしね。どんな感じなのか知りたくて、ともあれ来ました」と。いずれはわが身、との想いで、まさに「自分ごと」と捉えておられるのがよくわかります。
 また、職場で回覧されたチラシを見てきた、という社会福祉関係の方たちの姿もありました。「仕事で関わる認知症の方が、働きたいと言っておられる。そういうひとに、こういう取り組みがありますよ、とおススメできるかもしれないけれど、まず自分が見てみないといけない、と思って」とのことばは、この取り組みが特に社会福祉関係者から大きな注目を集め、今後の伸びしろが大きいことを感じさせてくれました。
安河内下京区長とお話しするキャストさん
安河内下京区長とお話しするキャストさん
ゆるキャラたちも応援に。下京区・シモンちゃんと大丸・デッチ―くん揃い踏み
ゆるキャラたちも応援に。下京区・シモンちゃんと大丸・デッチ―くん揃い踏み
ああ~疲れた。ちょっと一休み
ああ~疲れた。ちょっと一休み
おなじみの下京区民の方たちも食べて応援に!
おなじみの下京区民の方たちも食べて応援に!

働くこと・必要とされること・つながること

 食堂には、大勢のお客さまをお迎えする、「キャスト」と呼ばれる認知症の方々が10名、そのキャストさんをボランティアとして支えるスタッフが総勢26名、忙しく立ち働いています。オーダーをとり、厨房に伝え、出てきたお料理をワゴンやお盆に載せてテーブルまで運んでいく。
 そのどの工程も、キャストさんとスタッフさんの二人三脚で。キャストはお母さん、娘がスタッフという組み合わせもちらほら。二人の間には揺るぎない信頼関係があるのが感じられ、胸にポッとあたたかい灯りが点るようです。
 歩くのはゆっくり、足元がちょっと危なかったり、実際に「あれ? 注文ダブった?」といった場面もありますが、だれも責めるひともおらず、そこにあるのはただ笑顔ばかり。注文を運んでいった先のテーブルでは、会話が弾むことも。つい座り込んで長話になることもありますが、またスタッフに呼び戻されて、いそいそと立ち上がり自分の仕事に戻る姿にも、あたたかい視線が集まります。
 見ていて驚いたのは、最初はうつむき加減で背中や腰が曲がっていたキャストさんが、次第にピンと背筋を伸ばし、しっかり前を向いて歩いて行かれること。硬かった表情もだんだんほぐれ、くしゃくしゃの笑顔でお客さんとコミュニケーションする姿もあちこちで見られました。
 奥の控室には、交代で、キャストさんとスタッフさんが休みに来ます。
 ふだんは宇治市に住んでいるというキャストさんは、リストランテに参加するのは今回が2回目。もともと下京区に暮らしていたそうで、「このあたりはさんぽコースだったから」と笑い声と共にお話をしてくれました。
 どうですか、疲れましたか?と尋ねると、
 「とってもひとが多くて賑やか。大きなお風呂屋さんにいるみたいで楽しい」とのこと。名札には「歌うのが好き」と書いてあり、尋ねてみると、昔コーラスをやっていて、ソプラノが得意だったとか。なので、「わーっと音が反響すると気持ちがこうね、楽しくなるの」と身振り手振りで答えてくれました。
 「ふだんは一人暮らしでとても静か。こことは真反対の世界に生きているわけ。ふだん静かに暮らして充電しているの。いままたちょっと休憩して充電中」と教えてくれる表情は、ちょっといたずらっぽく、まるで少女のよう。「エネルギーを満タンにしてね、またがんばるわ」と、スタッフの娘さんに手を引かれて、仕事場に戻って行かれました。
 ずっと長く飲食店を営んでいたという女性は、働いてお金をもらうのが当たり前という世界で生きてきたので、「母は、働いて対価をいただけるのが何よりうれしいんです」と、娘さんが教えてくれました。
 科学の先生をしていたというおじいちゃまは、ひととお話をすることが大好き。長年生徒たちと関わってこられたからなのでしょうか。やさしい笑顔は、見ているひとも幸せにしてくれます。
お仕事を終えてねぎらってもらいながら対価をいただきます
お仕事を終えてねぎらってもらいながら対価をいただきます
打ち合わせ・準備は入念に。スタッフ&キャストミーティングは開店2時間前
打ち合わせ・準備は入念に。スタッフ&キャストミーティングは開店2時間前

これからのこと

“認知症の方々が「働くこと」を通して「人と接する、社会とつながる」”
今回のリストランテのチラシにはそう書かれています。
 
 失敗してはいけない、まちがってはいけない、という重圧から逃れ、「まぁいいか」の精神でおおらかに、まちがっても受け入れる、楽しんでしまう。
 そんな社会で生きたい、暮らしたい、と実はだれもが願っているのではないでしょうか。
 こども返りともいわれるように、私たちはだれもがいずれは年老いていきます。いままでできていたことがだんだんできなくなり、不自由や不便が増えていく。
 でもそれはいわば当たり前のこと。花が咲き誇り、やがてしおれ散っていくように、自然の摂理のなかで生きる私たちは、だれもが老いていくことから逃れられません。
 老いて認知症になっても、誇りを持ちたい。生きていることを楽しみたい。そして、その願いが活かされる社会が実現できたら、いまよりももっと年を重ねていくことは喜びをもって受け入れられていくのかもしれません。
 「注文をまちがえるリストランテ」が365日、京都のどこかのお店でオープンしていることが当たり前になるような。「今日はどこに行こうかな」と迷うくらい、あちこちで開店しているのが日常の光景になったりしたら素敵だなぁと、取材しながら「まいぷれ」編集部は京都の未来図を妄想しました。

―取材協力―
◇まぁいいかlaboきょうと
◇大丸京都店

まぁいいかCafe~注文をまちがえるリストランテ~ 近日開催予定

◇10月12日(土)11:00~14:00※延期
 京田辺市 ブランチ松井山手 イオリカフェ(笹屋伊織)
 ※天候不良につき、11月4日(祝・月)同時間に延期します。

◇11月10日(日)12:15~15:30(L.O.14:30))
 精華町地域福祉センターかしのき苑 やすらぎホール

◇12月22日(日)15:00~18:00
 京都市下京区 マールカフェ

◇2020年1月26日(日)11:00~14:00
 京都市左京区 焼肉いちなん

[お問い合わせ]まぁいいかlaboきょうと

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